第1回 信頼関係を育もう

 春。水仙やチューリップが蕾をほころばせ、いそいそと入園式に向かう親子連れや、新学期はりきって学校に向かう子どもたちを見かける季節になりました。

幼児期の子どもを持つお母さんやお父さんにとっては、我が子の成長を改めて感じつつ、新しい環境にうまく入っていけるか、期待と不安の入り混じったまなざしでお子さんを見守っていらっしゃることでしょう。今までの、『家庭』という環境の中で、お母さんやお父さんへの信頼感や安心感をしっかり培ってきたお子さんなら大丈夫、新しい環境に入って、慣れる時間に個人差はあっても、お友達や先生との間に信頼関係を築いていけるはずです。

 「うちは信頼感や安心感をしっかり培ってきたといえるのかしら」・・・そんなに難しく考えることはありません。まだ生まれて間もない赤ちゃんの頃、お子さんが泣いたらおむつを替えたりおっぱいをあげたりしたでしょう? 表情が豊かになってきた頃も、お子さんの顔を見て微笑んだり、抱っこして一緒に笑ったり話しかけたりしたでしょう? そんな自然なスキンシップやコミュニケーションが、人に対する信頼感や安心感を育むのです。

 「でも、まだ私と離れる時泣くので心配です」・・・泣くのはお母さんとの絆がしっかり作られている証拠です。馴染んだ『家庭』という環境から目新しい部屋、まだよく知らない先生といった新しい環境への変化を敏感に感じるのは当然のことです。お母さんが明るく「いってらっしゃい」と送り出してあげてください。
先生に慣れて、周りに関心が向いてくれば「行ってきます」「バイバイ」と、すんなり離れられるようになります。いざそうなってしまうと、今度は物足りなく感じられるかもしれませんね。

 『家庭』や『園』だけでなく、『親』や『教師』も広い意味で子どもを取り巻く環境といえます。自分を取り巻く周りの環境から、子どもはいろんなものを吸収していきます。

 人格形成の基盤を作る大事な時期だからこそ、乳幼児期に子どもを取り巻く環境を整えていく必要があります。それぞれのお子さんの発達や興味をよく観察しながらアプローチするモンテッソーリ教育の考え方は、モンテッソーリ園だけのものではありません。あなたのもとに生まれてきた命が、一人の人間として自己を確立していくために、そして楽しい子育てのためにご家庭でもぜひとも役立たせてください。

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WASEDA Frontier Kids Learning Centerアドバイザー野村謡子が園での保育経験を活かし、モンテッソーリ教育の内容を身近な例を挙げながら紹介。家庭で活かせる「モンテッソーリの子どもの見方」をお伝えしていきます。

野村謡子<のむらようこ>
青山学院大学卒。息子の「子どもの家」入園をきっかけに、モンテッソーリ教育に出会う。教師のディプロマを取得後、モンテッソーリ園に12年勤務。現在も WASEDA Frontier Kidsアドバイザーをはじめ、多岐にわたりモンテッソーリ教育に携わる。