第9回 子育てにマニュアルはあるのでしょうか?

 子育てに、果たして確かな「マニュアル」は、あるのでしょうか?
 さまざまな育児雑誌や子育てに関する本があります。その中で主張されているものは、それこそ千差万別、種々さまざまです。
 ある本には「叱って育てなさい」と書いてあるし、ある本には「できるだけほめなさい」と書いてある。これでは子育てに「正しい方法などない」と思われても当然です。

 あるときすばらしい実践をされている教育者の方の講演で、こんな言葉を聞きました。

「悪いことをした中学生の息子に『おまえなんか、このうちを出て行け!』と父親が言ったとします。そのとき、ある子は、親父はこれほど真剣におれのことを考えてくれているのかと『お父さん、ごめん』というかもしれません。また『そしたら出て行ってやる!』と本当に出て行ってしまう子もいるでしょう。このように、教育に『こうすれば正しい』というものは、ないのです」

 たしかに、その通りです。具体的な場面になると、その子の性格や環境、そのほかさまざまな状況によって叱り方でも違ってくるでしょう。

 川上元巨人軍監督が、「長島を叱るときは、みんなの前で、大声で叱った。しかし、王を叱るときは、二人きりのときに、説いて聞かせるようにした」と話されていました。長島さんと王さんの性格の違いで叱り方を変えていた、というわけです。

 では、子育ての基本原則のようなものがまったくないのか、というとそうは思いません。

 私は、園で行っている「生活の四大原則」は、しつけの大原則、そして、子どもの小さな達成を「ほめ、励まし、認める」言葉がけ、これだけは普遍のものだと考えているのです。

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かすが幼稚園 理事長・園長 米川安宜
京都市右京区の私立園。園長は同志社大学法学部卒業後、國學院大學で神道学、佛教大学で幼児教育を学ぶ。キリスト教、神道、仏教と三つの宗教の大学で学んだ特異な経験をもつ。「子どもは大人よりも能力が高い」という目で子どもと関わり、子どもの脳の発達にあった教育と、積極的な心構えを育てる新しい幼児教育を行っている。また、「幼児期こそ、しつけの最適期」として、しつけ・礼儀、道徳教育も重視している。 (http://www.kasuga.ed.jp/)