幼児期に子どもの中からあふれ出る特殊なエネルギー「敏感期」についてお話ししてきました。お母さんもモンテッソーリの子どもの見方を知ると、日常の中で我が子に訪れた「秩序の敏感期」や「運動の敏感期」の姿を、これがそうなんじゃないかしらと、気づくことが増えていくと思います。
子どもは、何もできない存在としてこの世界に生まれてきます。そして、ひとりで様々なことができるようになろうとします。「自立」に向かって歩み出すのです。ところが、これは家庭ではいたずらや困ったこととして現れることが少なくありません。ドレッサーの引き出しを開けて口紅のふたを開けて家具に塗ってしまったとか、お友達のうちに遊びに行ったら壁に名前を落書きしてしまったとか、おかあさんにとっては叱る対象になることがいっぱいです。
でもこれは自分の意志通りに体を動かすことができるようになりたいという、耐え難い衝動としての行動であることを心にとめておいていただきたいのです。
モンテッソーリは出会った子どもを観察し、「なぜそうするのか」疑問を持ち、その科学者としての優れた知性をフルに働かせて研究に取り組みました。そして、生理学や生物学などの知識を元にその根拠を明らかにしていきました。その中で子どもの敏感期に見合った環境の場として整えられていったのが、モンテッソーリの作った子どもの家でした。
モンテッソーリ教育の場では、子どもの敏感期にあわせて環境を準備します。その分野は、「日常生活の練習」「感覚教育」「言語教育」「算数教育」「文化教育」に分かれています。この5分野は、それぞれ子どもの「運動の敏感期」「感覚(五感)の敏感期」「言葉・文字の敏感期」「数に対する敏感期」「文化に対する敏感期」に対応したものを体系化したものです。
どれも、幼児期という子どもが自ら育とうとしている時期に、それを助けるべく見合った環境を整えるという立場から生まれました。
その中で、基本となっているのは
1. 子どもを観察し「なぜそんなことをするのかしら」と疑問をもつ。
2. 子どもが必要としている行動を安心してできるような環境を整える。
3. その活動を、子どもが理解して一人でもできるように、やり方をわかりやすく示す。
という考え方です。
この環境の中で、子どもたちは自分の興味に沿ってひとりでいろんなことができるように成長していきました。
モンテッソーリ女史の発見は、私たちにも追体験することができます。環境を整えることによって、子どもの可能性を広げていくことができるのです。
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新宿区河田町にあるWASEDA Frontier Kids Learning Centerの園長、橋本 恵理が、自らの子育て経験を活かし、モンテッソーリ教育の内容を身近な例を挙げながら紹介。「個性と自立心を養う」教育法であることをお伝えしていきます。
<橋本 恵理 (はしもと えり)> 早稲田大学理工学部卒業。大手保育事業会社にて認可保育園や駅型保育所などの立ち 上げ経験を持つ。2003年、幼児教育におけるベンチャー企業である?フューチャーフ ロンティアーズ取締役(COO)に就任。現在、新宿区河田町にモンテッソーリメソッ ドをベースに日本人を対象としたインターナショナルスクール WASEDA Frontier Kids Learning Centerの園長として、また2児の母としても活躍中。