第2回 生まれてきてくれてありがとう

 子どもが安定して自信に満ち溢れ確固たる自分を創るための第一歩、それは“自分は生まれてきてよかった”という安心感を得ることです。
 自分が生まれてきてよかったと思えるかどうか、それは親が自分という存在を喜んでくれているかどうかに大きく影響を受けます。生まれてきて良かったという感覚が十分でないと情緒が不安定になったり、大人になってから自分の存在感を感じることが出来なかったりします。
 私は、カウンセリングのクライアントさんに、自分が子どもになったつもりで、親があなたの存在を喜んでくれているかどうかを感じてみる演習を、時々やってもらいます。“私の親は私の誕生日を喜んでくれていないようです”と答えるクライアントさんほど、死にたい気分になることが多いという結果が出ています。
つまり、親が自分の存在を喜んでいるということは、「存在すること」「生きていくこと」への大きな栄養分になるのです。
 子どもは、自分と目が合ったときに親が嬉しそうに微笑むと、“私は喜ばれている”と思うことが出来るけれど、もし顔をしかめられてしまうと“私は喜ばれていない”と感じてしまいます。親が心の中で“子どもを愛している”といくら思っていても、子どもは親の態度や言葉で自分が愛されているかどうかを判断してしまいます。だから“あなたを愛している”と態度や言葉で伝えていくことが大切なのです。
時には、子どもを膝の上に乗せ、優しく抱きしめ、“生まれてきてくれて本当にありがとう”と嬉しそうに囁いてあげてください。
生まれてきてくれてありがとうの反対の意味になってしまう反栄養語には、以下のものがあります。

あなたが生まれてから私は苦労した
→私という存在がなければ親は苦労しなかったのにと感じることがあります。
あなたは橋の下で拾ってきた
→私はいなくても良かったんだと感じることがあります。
あなたさえいなければ私は○○できたのに
→私が存在したせいで親は幸せになれないと感じることがあります。

   生まれてきてくれてありがとう。
   本当にあなたが生まれたときに心からそう思ったんです。
   毎日忙しくて、ついつい忘れていただけなんです。
   言いたかったけど、少し照れくさかっただけなんです。
   思い出しました。あなたが生まれたとき、
   かわいいあなたのお世話が出来ることは、
   私の特権であり、神様のご褒美だと思ったんです。
   今日からあなたに私の気持ちを少しずつ伝えます。
   私のこともたくさん知ってください。
   あなたが私の子どもで生まれてくれて本当に嬉しい。
   本当にありがとう。
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幼稚園や小中学校での講演活動や個人カウンセリングで活躍中の心理カウンセラー、倉成 央がおくるコラム式カウンセリング。 講演現場での出来事やカウンセリングなどの実体験を織り交ぜながら、様々な心理的アドバイスを紹介していきます。
<倉成 央 (くらなり ひろし)> 心理カウンセラー、各種(文化サークル、専門学校等)心理カウンセリング講座講師。 診療内科医院などの紹介で個人カウンセリングを行っている。また不登校や引きこもり、家庭内暴力等子供の問題や、子育ての問題、母親のストレスケアーについても、多くのカウンセリングを実施している。 幼稚園や小中学校での講演活動も行っており、主な講演テーマには「こんな言葉が子供を傷つける」「ゆとりをもって子供と接するために」などがある。