Monthly Archives: 1月 2004

第4回 子どもを伸ばす環境をつくろう ?敏感期にあった環境を整えることが子どもの可能性を広げます?

 幼児期に子どもの中からあふれ出る特殊なエネルギー「敏感期」についてお話ししてきました。お母さんもモンテッソーリの子どもの見方を知ると、日常の中で我が子に訪れた「秩序の敏感期」や「運動の敏感期」の姿を、これがそうなんじゃないかしらと、気づくことが増えていくと思います。
 子どもは、何もできない存在としてこの世界に生まれてきます。そして、ひとりで様々なことができるようになろうとします。「自立」に向かって歩み出すのです。ところが、これは家庭ではいたずらや困ったこととして現れることが少なくありません。ドレッサーの引き出しを開けて口紅のふたを開けて家具に塗ってしまったとか、お友達のうちに遊びに行ったら壁に名前を落書きしてしまったとか、おかあさんにとっては叱る対象になることがいっぱいです。
 でもこれは自分の意志通りに体を動かすことができるようになりたいという、耐え難い衝動としての行動であることを心にとめておいていただきたいのです。

 モンテッソーリは出会った子どもを観察し、「なぜそうするのか」疑問を持ち、その科学者としての優れた知性をフルに働かせて研究に取り組みました。そして、生理学や生物学などの知識を元にその根拠を明らかにしていきました。その中で子どもの敏感期に見合った環境の場として整えられていったのが、モンテッソーリの作った子どもの家でした。

 モンテッソーリ教育の場では、子どもの敏感期にあわせて環境を準備します。その分野は、「日常生活の練習」「感覚教育」「言語教育」「算数教育」「文化教育」に分かれています。この5分野は、それぞれ子どもの「運動の敏感期」「感覚(五感)の敏感期」「言葉・文字の敏感期」「数に対する敏感期」「文化に対する敏感期」に対応したものを体系化したものです。
 どれも、幼児期という子どもが自ら育とうとしている時期に、それを助けるべく見合った環境を整えるという立場から生まれました。

その中で、基本となっているのは
 1. 子どもを観察し「なぜそんなことをするのかしら」と疑問をもつ。
 2. 子どもが必要としている行動を安心してできるような環境を整える。
 3. その活動を、子どもが理解して一人でもできるように、やり方をわかりやすく示す。
という考え方です。
 この環境の中で、子どもたちは自分の興味に沿ってひとりでいろんなことができるように成長していきました。
 モンテッソーリ女史の発見は、私たちにも追体験することができます。環境を整えることによって、子どもの可能性を広げていくことができるのです。

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新宿区河田町にあるWASEDA Frontier Kids Learning Centerの園長、橋本 恵理が、自らの子育て経験を活かし、モンテッソーリ教育の内容を身近な例を挙げながら紹介。「個性と自立心を養う」教育法であることをお伝えしていきます。

<橋本 恵理 (はしもと えり)> 早稲田大学理工学部卒業。大手保育事業会社にて認可保育園や駅型保育所などの立ち 上げ経験を持つ。2003年、幼児教育におけるベンチャー企業である?フューチャーフ ロンティアーズ取締役(COO)に就任。現在、新宿区河田町にモンテッソーリメソッ ドをベースに日本人を対象としたインターナショナルスクール WASEDA Frontier  Kids Learning Centerの園長として、また2児の母としても活躍中。

第6回 「クレヨンの肌色」

新年おめでとうございます。
本年もどうぞ宜しくお願いいたします。

我が家では二人の娘がワシントン州の大学から戻り、皆でおせち料理を作りました。皆様もご家族と共に素敵なお正月を迎えられたことと思います。海外に住んでいる日本人にとって、日本人であることを一番強く感じさせられる時季はやはり年末年始ではないでしょうか。言葉を言い換えれば、この時季に日本の文化習慣が家族との繋がりと共に一番強く生かされているのでしょう。
それは、自分が今属している社会と自分がかつて日本で体験した生活習慣が余りにも異なることから感じる現象とも言えます。下記のハワイのお正月に詳細を記述しますので、そちらも読んで下さいね。

さて、皆さんのお手元にクレヨンの箱がありますか?お子さんのクレヨンの箱をちょっと覗かしてもらって下さい。その中のクレヨンで薄いピンク色でベージュにちかい色がありますか?あったらその色の名前を調べてみて下さい。以前その色は、「はだいろ」と呼ばれていました。「肌の色」の意味の「はだいろ」です。
私の二人の娘が日本で幼稚園に通っていた頃、人間を描くとその色で顔、手足を塗っていました。ところが、娘たちの肌の色はもっと茶色っぽいのです。父親にそれを指摘されて、自分を描くときは「はだいろ」のクレヨンの上から「茶色」のクレヨンを重ねて塗るようになりました。今までそれに気がつかなかった私は、ショックでした。人間の肌の色を「はだいろ」のクレヨンで塗ることに慣れすぎていて、いつの間にか肌の色は「はだいろ」と、概念が自分の中で固定化していた事実を知って、それにショックを受けたのです。日米の子どもの描いた絵を比較すると、日本の子どもの人物画は総て黒い髪に「はだいろ」の肌であるのに対し、アメリカの子どもの描く人物画は髪の色、目の色、肌の色が色々です。

現に私自身も経験がありますが、ヨーロッパ留学から始めて日本に戻った時、羽田国際空港に出迎えに来ている日本人の群集を見た途端に全員が同じ顔に見えてしまいました。目に入った人皆が同じ髪の色、肌の色で、顔も平べったいし……カルチャーショックでした。暫くしてその場の雰囲気に慣れてくると、一人一人の違いが解るようになりました。でもこの時の最初のショックは痛烈でした。
なにしろ地球以外の惑星に着いてしまったのかと、思えるほどでしたから……。

日本の園児達が、周囲の人物を描くのに黒い髪、「はだいろ」の肌を色つけるのはごく自然のことです。でもこの「はだいろ」が、『人間の肌の色である概念』を植えつけて固定化してしまうことは、日本の子供たちが将来色々な国民や民族の人達と接する時に邪魔になるのではないかと、私は心配になりました。
そこで私は、日本のマスコミやクレヨンメーカーに「はだいろ」の名称を変えるように訴えました。様々な関係者の方々が私の指摘に注目し賛同されましたが、私が10年前にハワイに移った後も日本のクレヨンの「はだいろ」の名称は変わっていませんでした。ところが最近、国際結婚グループの方々とインターネットで交信していた時、クレヨンの「はだいろ」が5年程前に呼び方が変わったことを教えられました。アメリカではペイルオレンジとかペイルピーチとか呼ばれていますが、日本のクレヨンメーカーはどの様な名前をつけたのでしょうか?

たった一つのクレヨンの名称でも、子ども達へは大きな影響があることを皆様にはご理解いただけるかと思います。人と自分の違いに気づいてくる幼稚園児は、まだまだ柔軟な思考をもっています。大人の固定観念を植え付けるのではなく、違いと正しく向き合うことを教えて上げることが、大人の役目だと思います。
子どもが自分と異なる人を恐れたり、避けたり、必要以上に興味本位の好奇心を向けたりした時、お父さんやお母さんの言葉や態度で子どもの気持ちが安らぐものです。つまり、お父さん、お母さんが異なる人を恐れたり、避けたり、興味本位の非健康的好奇心で接していれば、お子さんも同じように反応してしまいます。
未来の社会を築く子供たちが、様々な人と対等に接し、建設的に人間関係を広げ、豊かな人生が送れる平和な社会を望むなら、私たち大人が大人としての役目を果たす必要がありますよね。難しく考える前に、先ずはお子さんと一緒に楽しく行動してみて下さい。その方法ですか? 前回お話したように、お子さんと一緒に健康的好奇心を膨らませることです。知らないことがあれば、お子さんの前で相手の人に聞いたり、お子さんと一緒に書物で調べたりしたら新しい発見があるはずです。時と場合によっては、お子さんの意見やイマジネーションを尋ねることによって、あなた自身が新鮮な驚きを受けるかも知れませんよ。

娘たちの幼稚園での後日談があります。長女が卒園の時、次女も幼稚園を辞めることになったので、お別れにクラスの園児たちが次女に絵を描いて贈ってくれました。「マミー、みんなからの絵だけど面白いよ。私の顔は茶色だけど手と足が〔はだいろ〕になっていたり、顔も手も茶色だけど首だけ〔はだいろ〕になっている絵もあるよ。」次女の指摘に私もそのリボンで束ねられた20枚の絵を見せてもらいました。今まで「はだいろ」しかなかった子ども達の『肌の色』の固定観念が、崩れかけた証拠です。次女は大事にその絵の束を抱えていました。その次女は、将来教育者になって色々な国の子供たちに色々な世界のことを教えたいと、目下大学で勉学に励んでいます。

ノブコ タカハシ ムーア
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<ハワイのお正月>

12月半ばになると、スーパーマーケットには竹松で出来た卓上用の門松が少し並べられます。そしてクリスマスが過ぎると、一気にお正月の食材が増えてきます。とは言っても、日本のような賑わいを想像しないで下さい。ハワイ人口の四分の一ほどの、しかもその中でも熱心に日本文化継承主義者のみがこれらの品、雑煮用の餅やみずな(ほうれん草や三つ葉の代用品でハワイでは雑煮に良く使われます。)、ミニ鏡餅、正月用縁起の絵(七福神や鶴亀など)を購入するようです。
私は私流の演出をするので、余りこれらの品々とは縁がありません。又、日本から来ている日本人の方で余裕のある人達は、こちらの日本料理店で本格的おせち料理を予約する人もいるようです。といった具合で、お正月の盛り上がりは日本に比べたら間が抜けたように静かです。大方の人達は、大晦日にパーティーを盛大にするので、もっぱらの寝正月かリラックスの日です。でも、日本人や日本文化のバックグランドにふれている人の中には、テレビの紅白歌合戦を欠かさず見たり、ホノルルにある神社に初詣に行ったりするようです。
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多民族社会ハワイから異文化理解に役立つ情報を発信している スクール ハウス インターナショナルの運営者です。異民族間 結婚の家庭で育つお子さんの生活環境、多民族化がすすむ日本社会 で国際人教育を必要とされている日本の子どもたちの家庭環境を 一日も早く整えるために、自分の体験に基ついて語ります。 ご参考にしていただければ、大変嬉しいです。

<ノブコ タカハシ ムーア>
関東学院女子短期大学英文科卒業後、デンマークのInternational Peoples’ College で 23カ国の学生と共同生活をしながら、国際理解、国際平和を学ぶ。帰国後 民間ユネスコ活動に出会い以来30年間日本社会の国際化の最先端で様々な 国際交流プログラムを企画実施する。1993年3人の子どもたちの学校教育の為 ハワイに移民。同年それまでの体験をまとめた「集まれ!地球の子ども達」を出版。 School House International のホームページはこちら>>

第8回 愛のカタチ

皆様 こんにちは!!

クリスマスのデコレーションがあちらこちらで目に付くようになりました。もう12月、今年も残すところあと1ヶ月で終わりです。今年も、いろいろなことがありましたね。
特に、ここのところ毎日のように流れてくるニュースの中から、私鎌田が一番悲しく思っていることは、人と人の関係が日に日に希薄になってきていることです。
親と子、お友達同士、職場での人間関係、地域の人との関わりなど、皆どうしてしまったのだろうと思います。
そんな訳で、今年最後の皆様へのメッセージは“愛”について、考えてみたいと思います。

幼稚園児をお持ちの皆様に、かつて皆様がお医者様から「おめでたですよ」と言われた時の喜び、そして10ヶ月間お腹の中のお子様と一心同体だった時のこと、やっと外の世界へ出してあげてお子様自身が自分の力で呼吸できた時の感動など、全てがほんの5?6年前のことですよね。

でも、いざ産まれてくればきたで、お腹がすいたといっては泣き、おしっこが出たといっては泣き、眠いのに眠れないといっては泣き、ママ以外の人に抱かれるのはイヤといっては泣き・・・・。

それも、何度も経験を積んでだんだんに理解できるようになったということであって、最初は「どうして泣くの?」「どうしたら良いの?」と戸惑いながらの連続であったことと思われます。

その頃はさぞかし大変な毎日であったことでしょう。でも、それをなさってこられたからこそ今があるわけで、そんな経験がいかに大切か、言い換えれば、親が一人前の親になるようにお子様に育てられてきたとも言えると思います。

確かにお子様も一己の人格を持った人間です。しかしながら、他の動物に比べると、はるかに成長は遅いのです。人間として、一人前になるまでは親がきちんと育てていかなければならない責任があります。

基本は以下の三点です。
1. 丈夫な身体をつくること→身体に良い食事を与えること
2. 社会で生きていくための知識や技術を身に付けさせること→年齢に合ったルールや学問を身に付けさせること
3. 命の貴さを教えること→自然界の成り立ちを教えること

もちろん、この三点にはたくさんの枝葉がついていく訳ですが、たったこの三点をお子様にきちんと与えていらっしゃらない親御様が増えてきているように思えるのです。
食事一つをとってもそうです。丈夫な身体をつくるための食事って何でしょう?もちろん、バランスの良い食事ですよね。全て手作りでなくても構わないのですが、外から買ってきたお惣菜ばかりというのもどうでしょう・・・。
お母様が、家族の為に一生懸命にお料理を作っている姿を見た時、お子様はどう思われるでしょうか。「何を作ってくれるのかな」とワクワクし、食べた後には「作ってくれて有難う」と、感謝の気持ちを持つことでしょう。それに対してお母様は、「ちゃんと食べてくれて有難う。作った甲斐があったわ。」と思われることでしょう。
これが“愛”なのです。相手のことを思いやり、相手の為に何かをしてあげること、そして相手もそれを受け入れること、感謝の気持ちを持つことなのです。家族の中からそうした人間関係を築き、相手への思いやりを覚えさせていくことが、まさに前述の三点の子育ての基本なのではないかと思います。
難しく考える必要は全くありません。ただ、ちょうど今、幼稚園児をお持ちの親御様にとってはそれを教えるベストタイミングであることは間違いありません。是非、口に出して、声に出して、教えていってあげて頂きたいと思います

もうすぐ新年、どうぞ皆様、良いお年をお迎え下さい・・・・。

株式会社サマンサ 代表取締役 鎌田妙子
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元保育園園長、鎌田妙子が、今まで学んできた子育て理論や体験談などをもとに、子育ての悩みどころに対してアドバイスしていきます。毎回身近な事柄をテーマに、子育てアドバイスをお届けしていきますので是非ご覧ください。

<鎌田妙子> 1975年、北海道大学教育学部発達心理学研究室終了、認可施設 財団法人慈愛会保育園園長として9年間勤務。施設型保育の限界を超えるべく1986年独立。当時、日本では珍しいベビーシッター事業を立上げ、現在オフィス鎌田の代表として活躍中。