今まで、子どもの成長過程に見られる「敏感期」、それに見合った「環境」を準備することの重要性、そしてモンテッソーリ教育の目標である「自立」についてお話をしてきました。さて、これらの知識を毎日の子どもとの生活にどう生かしていけばいいのでしょうか。
我が子が生まれてからずっとおっぱいやミルクをやり、オムツを取り替えて 世話をしてきたお母さんは、子育てにストレスを感じる時があっても、一方こんなに私を必要とする存在がいるのだということに、喜びを感じた時もたくさんあったことと思います。
そんな中で、子どもが少しずつ成長しているのはわかっていても、まだ小さいから、これは私がやってあげなければできないことだ、と無意識に世話を焼いていることはありませんか。子どもは日々変化しています。今までできなかったことが、ちょっとしたきっかけである日突然できるようになることは珍しくありません。
「自分で、自分で」と主張するお子さんの場合は、その気持ちをくんでタイミングよく対応することができれば、自分でできることを増やしていくことができます。ところが、そうでないお子さんは、いつのまにかやってあげることが親子ともに当たり前になってしまいます。学校に行き始める頃になって急に一人でやりましょうといわれても、子どもは戸惑ってしまうでしょう。
子どもは自立へ向かって成長しているのだということを信じて、一人でできるようになるにはどうしたらいいかを意識してください。
親が意識することによって、子どもへの接し方は当然変わってきます。子どもが興味を持っている行為をていねいにはっきり見せることで、子どもも意識してその行為をやってみるようになります。これが、子どもが一人でできる環境をつくる第一歩になるのです。
また、大人のリズムや都合と食い違うためにいらいらしたり、つい子どもを叱ってしまう。こんな時こそ子どもを知るチャンスだと思ってください。どうしてこの子はものを投げるのだろう、どうしてこの子はじっと座っていられないのだろう。感情的になる気持ちを好奇心に変えて見てみてください。手を使って投げることに興味があるんじゃないか、今この子は歩きたいんじゃないか、お母さんの発見がお子さんのよりよい成長を助ける環境をつくるヒントになっていくのです。
医師だったモンテッソーリが、子どもの可能性を発見していったのは、科学者として客観的に見て分析するという術が身についていたからかもしれません。お母さんも、毎日の生活の中で意識して見る、意識して動くことを取り入れてみてください。
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新宿区河田町にあるWASEDA Frontier Kids Learning Centerの園長、橋本 恵理が、自らの子育て経験を活かし、モンテッソーリ教育の内容を身近な例を挙げながら紹介。「個性と自立心を養う」教育法であることをお伝えしていきます。
<橋本 恵理 (はしもと えり)> 早稲田大学理工学部卒業。大手保育事業会社にて認可保育園や駅型保育所などの立ち 上げ経験を持つ。2003年、幼児教育におけるベンチャー企業である?フューチャーフ ロンティアーズ取締役(COO)に就任。現在、新宿区河田町にモンテッソーリメソッ ドをベースに日本人を対象としたインターナショナルスクール WASEDA