私は、神社の宮司を兼務しています。宮司、というと、氏子さん、お参りにこられる方をはじめ、いろいろな方とお話しする機会があるものです。
あるとき、近所でも評判の、口うるさいおじいさんと境内でお話をしていました。普段から、「近頃の若いもんは、なってない。思いやりの心もない」など、嘆き、というか、怒りというか、そういうことをおっしゃっているおじいさんです。
さて、話が、ひょんなことから、「悔しかったこと」というものに及びました。
私が、「おじいさん、今までで、一番悔しかったことは、何ですか?」とたずねると、
「そりゃ、おまえ、普段から仲良くしている隣のじいさんが、わしに内緒で、家を建て替え始めたときが、一番悔しかったわい」
とのこと。
私は内心、仲良しなら喜んであげたらいいのに、と思いながらも、また、何かいわれたらかなわないので、話の矛先を変えようと、「じゃ、今までで、一番うれしかったこと、って、何ですか?」と、たずねました。
すると、そのおじいさん、いわく、
「そりゃ、その家が、工事の途中で、火事で燃えたときが、一番うれしかったわ!」。
「近頃のわかいもんは・・・」なんていえないでしょう、といって、笑い話ですますこともできますが、実は、振り返ってみると、私たちの中にも、人の幸福をねたんだり、反対に、不幸を喜んだり、面白がったり、ということはないでしょうか?
子どもたちには、本当の、「他人を思いやる心」「幸せを共有できる気持ち」を持ってもらえるように子育てしたいものです。
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かすが幼稚園 理事長・園長 米川安宜
京都市右京区の私立園。園長は同志社大学法学部卒業後、國學院大學で神道学、佛教大学で幼児教育を学ぶ。キリスト教、神道、仏教と三つの宗教の大学で学んだ特異な経験をもつ。「子どもは大人よりも能力が高い」という目で子どもと関わり、子どもの脳の発達にあった教育と、積極的な心構えを育てる新しい幼児教育を行っている。また、「幼児期こそ、しつけの最適期」として、しつけ・礼儀、道徳教育も重視している。 (http://www.kasuga.ed.jp/)