桜もいよいよ満開となり、入園の春までまさに秒読み。制服も園グッズも準備万端でワクワク、入園式が待ち遠しいばかり♪・・・のはずなのに、なぜかやっぱり、ドキドキも隠せない・・・。
そんな新入園児パパママに向けて、入園後の不安を一挙まとめて、東京都渋谷区の小鳩幼稚園園長・久松 洋行先生に解決していただきます!
(2007年3月28日 取材・青木 綾/文中敬称略)
〒151-0073 東京都渋谷区笹塚2-30-14
昭和24年8月設立。理想の未来へ羽ばたく子どもたちにちなんで園名を「小鳩」とし、「清く、明るく、強く、優しい」幼児像を目標に、そして子どもたちの「より良く育とうとする力」を信じて心を大切にした保育をしています。
―― 入園まであと1週間足らずとなりました。直前になって、わが子の園生活について、細かな不安があるパパママも多いかと思うのですが。
園長先生 そうですね。いよいよ入園という段階になり、親御さんにとっても、幼稚園に入ることが、にわかに現実味を帯びて来た頃だと思います。初めて、わが子を集団生活に送り出すのですから、様々な不安があっても仕方ないかもしれません。でも、送り出すご両親が不安に思っていると、その気持ちは、すぐにお子さんに伝わります。
うちの園では、そんな親御さんの不安を少しでも軽減するため、多く寄せられるであろう質問について詳しく書かれた冊子を配ったり、事前説明会などの折、「少しでも疑問や心配事があったら、直接連絡してください」とお願いしています。
そして、職員に対しても、とにかく“笑顔”で、お母さん※にどんどん声をかけ、「お母さんとのコミュニケーションを大切にする」ように指導しています。なぜなら、一日も早く、園との強い信頼関係を築き、お子さんだけでなく、お母さん方にもニコニコ笑顔で、楽しく登園していただきたいからです。お母さんが不安に思っている気持ちが、お子さんにすぐに伝わってしまうように、また、楽しい気持ちもすぐに伝わります。
お母さんが「幼稚園は楽しいところだよ!楽しんでいらっしゃい!」と心からお子さんに言えるように、私たちは、どんな細かいことでもお話を伺います。入園前、後にかかわらず、気がかりなことがあれば、遠慮無く、園に相談してみると良いと思いますよ。
―― しかしながら、親の立場から申し上げると、入園直後から、先生方にいちいち相談するのはためらわれます。なんだか、神経質な親、うるさい親、と思われそうで・・・。
園長先生 確かに、そういうお気持ちで、遠慮されている方も少なくないかもしれません。ですが、そういう心配、悩みを相談するのも、お母さんの“笑顔”一つで、むしろ、先生方をより身近で、頼りになる存在にするチャンスでもあります。うちの園では、積極的にお母さんにも声かけをするようにしていますが、例えばそうではなくても、お母さんから笑顔で、先生にお話されることは、園とコミュニケーションを図る上で、大切なことです。あまり大げさに考えず、気軽に相談してください。そして、私たちを味方にして、どんどん利用してやろう!というような気持ちで良いのではないかと思いますよ。
―― 3年保育で入園する子は特に、母子が離れられないのでは、と心配されている方も多いのですが、実際の入園後の様子はいかがですか?
園長先生 確かに、入園直後は、お母さんと別れるのが悲しくて、泣いてしまっているようなお子さんも時々も見受けられます。でも、私の経験上、1週間が「やま」ですね。幼稚園を嫌がったり、不安に思うようなお子さんは、むしろ、いろんな事がよくわかっているのです。わかっているからこそ不安になるのであって、幼稚園という新しい環境について、「安心して過ごせる、楽しい場所である」ということを、自分自身で理解さえすれば、すぐに楽しめるようになります。
しかしながら、中にはその1週間を過ぎても、不安が取り除けないお子さんも確かにいます。その場合はまず、担任の先生に相談してください。若い先生でも、専門の教育を受け、対処法を学んできています。自分一人で対処できなければ、きっと先輩や主任、そして園長に相談もするはずです。そして、お母さんと先生が一緒になって、そのお子さんについて考えてあげることで、必ず最善の方法を見つけることができるはずです。その子の好きなキャラクターについて話してみる、その子の好きな遊びを一緒にやってみる、そのような小さなことの積み重ねで、少しずつ、園を好きになっていけばいいのです。
そして、冒頭で話したとおり、お母さん自身が、楽しい気持ちで幼稚園に通ってくださることも大切です。お母さんの心の安定は、子どもの心を安定させるからです。また、来春入園を控えたお子さんならば、「プレ」など、未就園児のための活動に積極的に通い、幼稚園という環境に慣れておくのも、入園をスムーズにするコツです。
―― 園生活にむけて、おむつが取れていない、おもらしするのではないか、という「トイレ」の心配をされる方も多いかと思いますが、園側として、どう対処されていますか?
園長先生 入園してから、お子さんに知っていただきたいこと、覚えていただきたいことはたくさんありますが、その大前提には、園を好きになって、お友だちと楽しく遊んでほしいという思いがあります。ですから、新入園に関しての全ての不安に共通することですが、園としては「心配しないで大丈夫」とお伝えしたいと思います。もちろん、お母さんには、ご家庭での努力は続けていただきますが、トイレに関しては、たとえ、おむつをして入園されても、全く心配する必要はありません。
そして、おむつがとれて間もないお子さんでも、実際におもらしなどで失敗することは、あまりないので安心してください。その理由は、家庭よりも更にきめ細かい「声かけ」があるからです。特に、入園間もない時期には、先生はことあるごとに、トイレに行くことを促します。徐々にそのお子さんに合わせ、柔軟に対応していきますが、たとえたまに失敗しても、安心して園に通える心を大切にする方が大事だと考えます。ただ、ご家庭での様子、例えば、トイレが近い、遠い、うんちがふけないなど、注意してもらいたいことがあれば、きちんと先生に話しておくと良いでしょう。
また、園では、「和式」のトイレがある所も多いと思います。遠足などの折、意外に和式トイレが多いので、慣れておくためにも、デパートなどで和式のトイレを見つけたら、ぜひ、お子さんに使い方を教えてあげてください。
―― また、お弁当、給食などが始まり、好き嫌いの多い子だと、ちゃんと食べられるか心配になります。
園長先生 私は、新入園児のお母さんには、「慣れるまでは、小さめのお弁当箱に、お子さんの好きなものだけを入れてください」とお願いしています。中には、「お弁当なら食べてくれるのでは?」と嫌いなものを、最初から入れてしまうお母さんもいらっしゃるのですが、お弁当に入っていてもやっぱり、嫌いなものは嫌い(笑)。むしろ、嫌いなものが入っていることによって、お弁当自体がいやなもの、と思われる方が心配です。
「全部食べられた!」という自信をつけ、楽しく食事することも、大事な食育の一つ。徐々に量を増やし、苦手なものに挑戦するとしても、初めはとにかく「楽しく食べる」事を一番に考えてください。そして、かわいいかまぼこや、キャラクターに切り抜かれた海苔などを探しに、親子で買い物をしたりして、お弁当を介してのコミュニケーションも楽しんでほしいな、と思います。
―― 生活習慣に関して、朝寝坊に慣れている子が急に、早起きし、きちんと園生活を送れるでしょうか。
園長先生 年少さんでは、お昼ご飯のあと、眠ってしまう子もいます。そんなときは、畳とタオルケットを用意して、眠らせていますよ。昨今は、夜型の生活が定着しているせいか、夜更かし、朝寝坊のお子さんが増えているように思います。眠いときには眠ってもらっていいのですが、排便を含めた生活のリズムは、小学校に入るまでには、整えておきたいものです。朝、決まった時間に起きる、朝食をとる、必ずトイレに行くなど、徐々に習慣化させていきたいものですね。
―― 子どもの個性によって、初めての集団生活には不安が伴います。例えば、すごくわんぱくな子。お友達を叩いたりして、乱暴で嫌われはしないでしょうか。
園長先生 まず最初に、幼稚園は、子ども同士の小さい社会の中で、お子さんの社会性を養う場です。乱暴だったり、わがままだったり、とてもおとなしかったり、マイペースだったり、そういういろんなお子さんが、個性の違う仲間と出会い、様々な経験を通して、成長していく場所なんですね。
今、すごくわんぱくなお子さん、という話がでましたが、やんちゃな子というのは、周りのちょっとおとなしいタイプのお子さんには、その「元気」をプレゼントしてくれます。もちろん、叩いたり、噛んだり、そういう事があれば、その場で厳しく叱り、悪いことだいうことはしっかりと教えていきますが、そのトラブルを、全てのお子さんの成長につなげるように指導すべきだと思っています。
―― 反対に、おとなしくて、自分の意見も言えないような子も、集団生活についていけるか心配です。
園長先生 正直、わんぱくなお子さんよりも、そうしたおとなしいお子さんの元気を引き出す方が難しいですね。ですので、そういうタイプのお子さんは、気の合うお友だちと遊ばせるようにしたり、先生の目の届く場所で遊ばせたり、先ほど話したように、お母さんと常に相談しながら、一番良い方法を探していき、園生活を楽しめるようにします。お母さんも、お子さんの様子で気になることがあったら、まずは担任の先生に相談していただきたいです。
あと、どのタイプのお子さんにも言えることですが、入園後しばらくは、心身共に疲れ果てて帰ってきます。お母さんの気になる気持ちはわかるのですが、そうした状態で、園での事を根掘り葉掘り聞くのは、小さなお子さんには少々酷。難しいとは思いますが、時に見て見ぬふりをしながら、ゆったりと、お子さんの様子を見守っていただきたいですね。
―― 最後に、来春、入園を控えた子の親御さんへアドバイスをお願いします。
園長先生 来年の春、スムーズに幼稚園に慣れ、楽しい園生活を送るためには、まずは、お子さんのカラーにあった園を選ぶことから始まります。のびのびあり、のんびりあり、英語教室、体操教室、園舎の雰囲気、先生方の様子など、その目で確かめるべき事はたくさんあるでしょう。ぜひ、お子さんはもちろん、お母さんが楽しんで通える幼稚園を選んでください。まずは、実際に見学されるのが良いと思います。幼稚園側としては戦々恐々なのですが(笑)。幼稚園ねっとで取り出せるチェックリストは、なかなか良くできていますよ。
そして、行事だけ見学しても、実際の園の保育はわかりにくいので、できれば、普段の保育を見せてもらうのが良いと思います。うちの園では、1、2歳児対象の幼児教室を開いていますが、そのような「プレ」など、未就園児のための行事を利用するのも、一つの方法でしょう。早いところでは、夏頃から入園に向けての準備が始まりますので、どうぞ積極的に情報を収集し、お子さんにとっての最良の幼稚園を探してあげてください。
ご自分で園バスを運転され、園のいろいろなものも手作りされるという園長先生。先生自ら作られた、真新しい「小鳩幼稚園」の看板も白く輝き、新しい園児を待っています。何よりも園児のことを考え、先生方と共に愛情一杯に保育に携わっておられる園長先生の言葉は、常に“笑顔”で、明るく、元気!前向き!そして、全てのお話が、「心配しないで大丈夫」という頼もしさにあふれていました。
園長先生に限らず、園で働く先生方は、皆さん「プロ」。その子の事を誰より知っている親と、保育のプロ、先生がタッグを組むことで、よりよい保育が実現するということを再確認させていただきました。園長先生、お忙しい中、本当にありがとうございました。
第2回―おわり