『お受験』――今では少しも珍しいことではありません。幼稚園受験、小学校受験などを意識しているママパパにとって、幼児教室選びはお受験への第一歩。しかしながら、その幼児教室で子ども達は何をするのか、親は何をするべきなのか、様々なノウハウを知る手段は多くはありません。そこで今回は、渋谷区松濤で「ライフリトル」を経営されている島田葉子社長にお願いして、「松濤幼児教室※」のサマースクールに一日おじゃまさせていただき、幼児教室についてのお話も伺いました。
「お受験?関係な~い」と思っているそこのあなた!幼児教室はただお勉強するところだと思っていませんか?島田社長の「子ども達はどの子も本当にかわいい、私たちの宝物」とおっしゃる保育理念の延長で開かれるこの幼児教室は、子どもが人間として成長し、生きていく上で大切なことを、集団の中で自然に学び取れるように考えられています。必ずしも「お受験」のためだけではない、大切なことをたくさん経験させてもくれるこんな幼児教室、「お受験」への先入観を捨てて、ちょっとのぞいてみませんか?
(2007年9月10日 取材・青木 綾/文中敬称略)
- ■9時45分登園
「おはようございます」 - 先生と朝のご挨拶。ちょっと恥ずかしいな。でも正しい挨拶は礼儀作法の基本です。
- パパママと離れたくないけど、お友だちとも遊びたいな~・・・。日に日に、ママと離れるのも上手になってきました。
- きちんと靴をそろえられるかな?9日目の今朝は、言われなくても自分から!
- 靴をそろえたら、バッグの中からタオルとエプロン、ランチョンマットを決められた位置へ。
- 出席カードのシール貼り。毎朝自分ですることの一つです。今日が9個目! 明日で終わり・・・ちょっと寂しいな。小さな指で小さなシールをはがして貼るのは、子どもにとってはかなりの難作業。こんな細かい作業も、身につけてほしい事のひとつです。
- ■10時30分~
みんなが集まったら、朝のサークル活動の時間です。 - まずはみんなで朝のご挨拶!みんなと一緒なら、元気一杯大きな声で「おはようございます」って言えたね!
- 毎日、みんなの前で自己紹介。「好きな食べ物は何?」「好きなテレビ番組は?」お友だちの前で恥ずかしがらずに表現すること。そしてお友だちの話にじっと耳を傾けること。どちらも大切なお勉強です。
- 次は先生手作りのパネルを使って、あてっこゲーム。夏にちなんだカニやセミ、アイスクリームに子ども達も大喜び。記憶力、想像力を養い、季節感を学んでいきます。
- アイスクリームをあてっこできたら、今度はみんなでアイスクリームの歌を歌います♪明るく表現する喜びに、みんなのお顔もにっこにこです。
- 赤、緑、黄色などきれいな色を、競争で集めるゲームで盛り上がる子どもたち。小さいながらも、お友だちに負けじと一所懸命です。集団の中での指示行動の練習になります。
- ■11時~
今日のメインイベントのクッキー作り。様々な経験は子どもの心を豊かにします。 - 待ちに待ったクッキー作りの時間。先生の説明を聞くお顔も真剣そのもの。
- コネコネコネコネ・・・。抹茶のクッキーおいしそう。早く食べたいな。
- 型抜きも上手にできたよ!
- わ~、ちょっとふくらんだ!みんなで手作りしたことがうれしくて、テンションも最高潮!お帰りまでには焼き上がるから、おうちへのお土産にしようね。
- ■12時~
昼食の時間。自分でランチョンマット、コップ、スプーン、フォークを用意します。自分ですべきことは自分でやらせる。わかっていても、家庭ではついつい甘やかしがち - みんなで「いただきます!」手作りの給食はあったかくってすごくおいしいよ!
- みんなで食べるともっとおいしいね!
- ■12時30分~
お食事セットを自分で片付けたら、お迎えが来るまで、自由に遊ぶ時間です。 - 先生とお絵かき&折り紙タイム。どうやって折るの? 折り紙、切り絵など、日本の楽しい遊びもたくさん教えてくれます。
- 遊び終わった後は自分たちでお片付け。うんしょ、うんしょ!重いけどがんばるぞ~!
- ■13時30分~
お迎えの時間です。先生、ありがとうございました。 - 今日はパパママとお兄ちゃんにも手作りクッキーのお土産つきだよ!
- 名残惜しいけど、また明日!
―― お忙しい中お時間をいただき、ありがとうございます。先日、社長が新しく立ち上げられた幼児教室に、一日おじゃまさせていただきました。正直、「お受験」のための教室だと思い、かなり身構えて伺ったのですが・・・。
島田社長
机に座ってお勉強なんかしてなかったでしょう?(笑)。2~3歳を対象にしているお教室ですが、そのカリキュラムは家庭でママパパが行う“躾”をサポートし、集団の中で自然に社会のルールを学ぼう、家庭での保育だけでは経験できない、色々な体験をさせてあげよう、という目的で組まれています。
“躾”の部分では、挨拶から始まり、礼儀やお作法、また、集団生活の中で社会人としての第一歩を踏みだし、どう他の子と関わっていくかなど、この年頃の子どもにはこの先の人生に役立つ、学ばなければならないことはたくさんあります。そして、日本人として生まれたからには、日本の歌や遊び、お作法なども自然に身につけてほしいですよね。こんな風に、私はこの教室をいわゆる「お受験」に必要なことを教えるのではなく、多くのことを吸収するこの時期に、子どものこれからの人生に大切な事、役にたつ事を身につけてもらう場所、と考えています。
でも、この「人生に大切なことを学んでほしい」という思いは、何も私だけではなくて、多くの幼稚園や小学校の先生たちも望んでいること。ですから、結果的には「お受験」に向けての第一歩となるかもしれませんね。子ども達には楽しいばかりの時間かもしれませんが、多くの事柄を学び取ってもらえるようにと工夫し考えて、カリキュラムを作っています。
本教室のスタートは10月中旬を予定していますが、この夏、サマースクールとして、リトミック、知育、絵画をメインにしたスクールを、計3コース、プレオープンしました。(写真を見ながら)子ども達の楽しそうな笑顔、小さな社会で、立派に過ごしている姿、本当にかわいくてステキでしょう?
―― 本当ですね!今回見学させていただいたのが、10日コースの9日目ということもあり、どの子も自分でやるべきことをしっかり理解して、自発的に動いているのが印象的でした。ママパパがいると甘えてしまって何もできない子でも、同じ年頃の子と過ごすことで、あんなにもしっかりするものですね。
島田社長
そうですね。朝の登園の時も、ママと離れたくなくてちょっとぐずっていた子も、後半になると、自立心が芽生え、しっかりして、様子もずいぶん変わってきました。ずっとママと一緒にいた子たちだけど、子どもは順応性が高いもの。2~3歳の子ども達は、少し手助けをしてあげると、みるみる良い方向に変化していきますよ。今は、10月にまた、かわいい子ども達に会えるのを楽しみにしているところです。
―― 社長のお話を伺っていると、子ども達に対する愛情の深さをお言葉の至る所に感じます。幼児教室の話とは少し離れてしまうのですが、そもそも社長がこのお仕事をはじめられたきっかけは何だったのですか?また、どうしてこのような幼児教室を新たに立ち上げられたのですか?
島田社長
実は20年前、生活のために働かなくてはならなくなったので、私も二人の幼い我が子のため、託児施設を探して歩きました。何カ所か見学したけれど、そのどこにも子ども達を託したくなかった。
折しも、時代は核家族化が進み、昔のように子どもを安心して預けられるおばあちゃんや親戚もなく、近所付き合いも希薄になってきていました。そこで、近所のおばちゃまに預かってもらう、という感覚で預けられるアットホームで温かな託児所を作り、我が子の成長も見守りながら、私の仕事としていこうと考えたのです。極めて現実的な創業のきっかけでしょ?(笑)。
だから私は基本的に、ある時期までは子どもはママと過ごすのが一番だと考えています。でも、やむを得ず預けなければいけないママもいる・・・それなら、私が預かろう!私たちがママのかわりになろう!という気持ちで、我が子と同様に溢れる愛情を持って、お子様をお預かりしてきました。だって子ども達は皆、私たちの宝ですもの!
島田社長
幼児教室に関しては、場所柄、幼稚園、小学校を受験される方が多く、会員の方々からの要望が多かったのも開講の理由の一つです。また、実際に受験のために奮闘しているママの相談を受ける機会も多く、その度に私なりに何かサポートしてあげられないか、と考えていました。
世間一般では、「お受験」に関して否定的な意見もみられますよね?確かに、ママが余りにも入れ込んでしまうと、小さな子の心に大きな負担となり、実際に私も、子どもの様子がおかしいので、やんわりとご意見させていただいたこともありました。
でも、幼稚園、小学校を選び、受験させるということは、これも全て親から子どもへの愛情そのものなのです。良い環境で過ごしてほしい、良い友達を得てほしい、将来受験勉強で苦労しないでほしいなどなど、世間で非難されるような「見栄」などはごくごく一部あるかないかで、そもそも子どもへの愛情から、受験という選択をされているのですよね。だからこそ、私も私なりに何かお手伝いをしたいと考えるようになりました。
同時に、私には子ども達に身につけてほしいこと、学んでほしいこともたくさんありました。日本人として生まれたことに誇りを持ち、日本の良い伝統に親しんでほしい。例えば折り紙を使って、きれいな色を楽しんだり、切ったり貼ったり、絵を描いてみたり・・・。そして、きちんとした挨拶、目上の人に対する礼儀、美しい所作など、現代の核家族では教えることの難しくなった事を、小さい頃から自然に身につけてほしいなと。そのような学んでほしい事柄が、小学校受験で言えば、思考力、表現能力を養う、指示行動ができる、協調性を得ることなどにつながっていくのですが、長年子ども達と関わる中で、きちんとこのような大切な事を教える機会を作りたいと考えていたのも、開講の大きな理由です。
この仕事に就いて20年。私はお子様をお預かりしながら、ママパパの育児のサポートをしてきました。なんといっても、その子の育児の主役はママとパパ。幼児教室においても、そのスタンスを変えるつもりはありません。かわいい子ども達が、目を輝かせていられるような育児のお手伝いをしていくつもりです。
―― これから幼児教室を探すママパパへ、社長からアドバイスをお願いします。
島田社長
まず、お受験するならば初めの一歩として、「どういう子に育てたいのか?」という事を、今一度ご家族で話し合うことをおすすめします。幼稚園、小学校、それぞれの個性がありますから、学校選びにもとても大切なことです。
また、幼児教室にも個性があります。既に行きたい園、学校が決まっているなら、その学校の受験についてノウハウを持つ、実績のある幼児教室をお選びになるのがよいでしょう。うちの幼児教室のように、特定の受験を意識しないものもあります。幼児教室を選ぶ際にも、実際に足を運び、通われている子の様子や、周りの環境などもチェックするようにしてください。
最後に、子ども達は皆、どの子でも、ママパパのことが大好きです。だから、ママやパパの希望や願いを、100%かなえたいと一生懸命頑張ります。受験に関しても、ママやパパが一生懸命になればなるほど、子どもは二人の喜ぶ顔がみたい、がっかりさせたくない、と思うものなのです。幼児期の受験勉強が、子どもの純真な健気な気持ちを踏みにじるものであってはいけません。おおらかな気持ちで、子どもと一緒に色んな事を学び、楽しんでほしいですね。
子どものことを一番わかってあげられるのはママ。子ども達はママが大好きなのです。いつも笑って見守って、たくさん誉めてあげましょう。
松濤の幼児教室のやり手女社長・・・。そんな先入観で凝り固まった私を迎えてくれたのは、本当にやさしい、あたたかな島田社長の笑顔でした。子どもの様子を語るときの優しい笑顔、決して誰に対しても嘘をつかない、実直さが言葉の端々に溢れています。社長がまとうオーラは、「実業家」というよりも、「母」として、「人間」としての愛情のオーラであり、社長の周りに人が集まる理由を、少しの時間お話させていただいただけでも理解できました。こんなにも人間としての魅力あふれる女性に、私は今まであったことがありません!
今回は「幼児教室」というテーマであり、社長の素晴らしい話を全て記事にできないのが残念です。子育てに関しては他人に意見されると余りいい気がしない、というママも多いと思いますが、島田社長のお話は、「そうね、そうね」と聞いてくださりながら決して押しつけるのではなく、でもゆっくりと、心の中に染み渡っていきます。これぞ、この職業を天職とした人の神業!と感激しながら、超セレブの街・松濤を後にしました。
島田社長、本当にお忙しい中、貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。また、本来なら公開できないであろう幼児教室の中身を、幼稚園ねっとの読者のために、快く公開してくださったことを心よりお礼申し上げます。
第3回―おわり
10月開講 松濤幼児教室のご案内
基本的な生活ルール、マナーと躾、お作法、リトミックやリズム体操、造形絵画、日本の伝統遊び、行事、知育遊び、トイレトレーニングなど。母子分離や自立心の確立を目指します。
対象:平成16年4月2日~平成17年4月1日生まれのお子さま。
時間:10時~13時半まで。週2日コース→火曜・木曜、週3日コース→月曜・水曜・金曜、週5日コース→月曜~金曜 ※水曜日以外は給食あり
お問い合わせ:ライフリトル事務局(TEL:03-5454-2233)まで。
東京教育大学付属高校から明治学院大学へ進学。同大学法学部法律学科を卒業。
防衛庁長官官房(国家公務員)に10年間在職。昭和63年7月にライフリトルを渋谷区南平台で設立。平成元年10月には任意団体「全国ベビーシッター協会」を設立し(平成3年に社団法人「全国ベビーシッター協会」となる)、初代監査役・研修・広報活動を行う(現在も活動中)。
駒場東大前を経て、平成6年12月にライフリトルを渋谷区松涛へ移転。平成17年10月、チャイルドケア事業に加え、2~3歳対象の幼児教室を立ち上げる。
有限会社ライフ・リトル((http://www.lifelittle.co.jp/)
東京都渋谷区松濤2-2-17:事業内容:ベビーシッター派遣、チャイルドケア、インターナショナルスクール他